ブランド定点観測 Vol-7 ヴァシュロン・コンスタンタン

世界3大ブランドにして、世界最古の時計ブランド、Vコンスタンタン。しかし人気が無いという声もよく聞きます。理由はリセールバリューが低いから。APにはロイヤルオーク、パテックはノーチラスがあります。ヴァシュロンのライバルモデル「オーヴァーシーズ」は少々インパクトが弱いかも知れません。さて実際、どうなのでしょう?

フィフティーシックス 

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どうしても世間はヴァシュロン=オーヴァーシーズという方程式をプッシュする。しかし僕はあえて、彼らの最も得意なクラシックウォッチ、その中でもコンプリケーションを推したい。
ヴァシュロン・コンスタンタンの時計の魅力はブランド名だけでは無い。「キャビノティエ」時代から続く「職人気質の時計造り」にあると僕は思う。歯車の刃先までしっかりヤスリをかけて、磨きあげ摩擦を極限まで減らす芸当こそ、3大時計ブランドならではの仕上げでしょう。
3大ブランドの時計はそもそも生産量が少ないのが特徴です。さらに言えば、手にした人たちはそう簡単に時計を手放さない。流通数が少なく、元値も高いから中古を求める人も少ない、商品の売買取引が少ないことで、リセールバリューが低くなるのでしょう。
上の2020年の新作モデルの価格は390万円です。チョコレートブラウンの文字盤とピンクゴールドでドレスウォッチの王道モデルと思いきや、インデックスはアラビア数字になります。適度にカジュアルさを醸し出しモダンなモデルに仕上げています。
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トケマーでも数少ないフィフティーシックスが出品されていました。こちらも公式オンライン ブティックでは販売中、2019年モデルです。定価130万円、新品だけど買取店ではこの価格では厳しいでしょうか。
リセール市場ではどうしてもこの手のレザーストラップモデルは人気がありません。これはブレスモデルと違い、どうしても丁重な扱いが必要なことと、皮革は劣化が早く、メンテナンスもある程度必要になるからです。
もうひとつヴァシュロンの弱みは一部の人たちしか知られてないことです。時計好き以外には全く無名ブランド。僕も今まで一般人に質問しても知っていた人は皆無でした。
仮に有名ブランドでも、その事をわかってもらえない時計は「時計自慢」を考えている人には致命的になります。結果的にこれらの時計は中古市場では一部の時計好きからしか関心を持たれない運命を辿るのです。
トケマーのフィフティシックスも中古未使用で110万円前後ですが、即売り切れは難しいでしょう。ロレックスよりお買い得と思っているのは僕だけでしょうか?

ヴァシュロンのレガシーが詰まっている、フィフティーシックス

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正統派ドレスウォッチ、フィフティーシックスは1956年代に造られたモデルを現代に蘇らせたいわゆるヘリテージモデルです。最新テクノロジーを詰め込んだムーブメントはケース厚みを僅か11.6㎜にまで薄く仕上げています。
さらにこのムーンフェイズは122年間正確に作動し続けるのです。これもこの値段なら当たり前と思いがちですが、そう簡単ではありません。
これにコンプリートカレンダー機能が加わるため、なかなかそのブランド技術を周囲の人に説明しても理解してもらうことは難しいでしょう。
またこの時計が醸し出すなんとも言えない雰囲気はこのヴァシュロンならではでしょう。3大時計ブランドで、「マルタクロス」を授かっていることは伊達ではない、と感じさせてくれる時計です。
どうしても今はラグジュアリースポーツモデルが時計では主流を占めます。そのためドレスウォッチは敬遠されがちです。ましてや日本の夏は高温多湿ゆえどうしてもブレスレットモデルの方が重宝します。
フィフティーシックスにはステンレス ブレスモデルも存在しますが、僕はこのフィフティーシックスをチョイスするなら、ぜひレザーをセレクトしてみるのをおすすめします。
そして1956年から続くブランドのレガシー(財産)を存分に味わって欲しいです。

オーヴァーシーズの未来は?

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ヴァシュロンのような名門ブランドは歴史が長く、これまでのクライアントも大切にしなきゃいけないことから、斬新な時計の提案は、難しい環境にあります。ステンレス ウォッチがジュネーブの名門ブランドで主流になってきたのは1970年代以降です。
オーデマピゲやパテックフィリップといった他の名門もステンレスモデルをリリースしていますが、彼らとて、ブランドのフラッグシップモデルに位置付けてはいません。
ステンレス モデルはマーケットでは人気ですが、それをブランドの柱に置くことは彼らのレガシーを捨てるも同然。ブランドのアイデンティティーの喪失につながります。
ヴァシュロンもその考えは持っているはずです。だからこそ、オーヴァーシーズの位置付けは取締役会でも慎重な議論を重ねていることが望まれます。
個人的な意見ですが、パテックのノーチラスと同様、ステンレスモデルのオーヴァーシーズをヴァシュロンが生産を将来増強するとは思えません。

リーセールに固執しない時計選びを!

都市を飛ぶ円

都市を飛ぶ円

リセールバリューでの時計選びもある程度参考にする事は重要です。しかしそれだけで時計を選ぶのは悲しいと僕は思います。
むしろ中古価格が低い時計を敢えて狙い、そこから「掘り出しモノ」を発見してください。
ヴァシュロン・コンスタンタンのような時計を!

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Source: 時計怪獣