【時計の知識】F.P.ジュルヌの代表モデル「クロノメーター・レゾナンス」から知る!「共振時計」とは何か?

ブログ担当者:須川

 

■【時計の知識】F.P.ジュルヌの代表モデル「クロノメーター・レゾナンス」から知る!「共振時計」とは何か?

 

今回は、マニアックな時計知識を紹介する企画として、

 

共振時計(レゾナンス/Resonance)

 

について説明をします。

 

「レゾナンス」という言葉はおそらく知っている方は少ないとは思いますが、時計好きの方であれば、F.P.ジュルヌの代表作「クロノメーター・レゾナンス」で聞いたことがあるかもしれません。

↑クロノメーター・レゾナンス

 

この「レゾナンス」という言葉ですが、日本語にすると、「共振(きょうしん)」と言います。この「共振」は物理現象の一種で、「隣接する2 つの振動体は互いに影響を及ぼし、やがて同期する」という現象を指します。

 

例えば、昔の時計に「柱時計」があります。これは、いわゆる、童謡「大きな古時計」の歌に出てくるような、チクタク動く“振り子”を持った時計です。実は、このような振り子時計は2台以上が近くにあると、お互いに影響し合い、そのチクタクする振り子が全部同じ動きになってしまいます。つまり、振り子はお互いが近づくと、動きが“同期”するのす。

↑振り子時計

 

この振り子が同期する不思議な現象は、振り子の発見者でもあるクリスチャン・ホイヘンス(1629-1695年)によって1665年に発見されています。そして、あの有名なアブラアン・ルイ・ブレゲ(1747-1823年)やアンティド・ジャンヴィエ(1751-1835年)も、この共振現象に興味を持ち、実験や試作を行いました。

 

実は彼らは、

 

「共振」を利用すれば、時計の「精度」を改善できる

 

と考えていたのです。

 

そして、時を超え、フランソワ・ポール・ジュルヌ氏も彼ら偉人の後に続きます。過去の研究からインスピレーションを得て、2000年に、「クロノメーター・レゾナンス」をリリースします。

この時計は、時計愛好家の中でも大きな話題になりました。なぜなら、クロノメーター・レゾナンスは、ホイヘンス、ブレゲ、ジャンヴィエが作った歴史のレールの上にある作品で、その夢の続きを見ることのできる時計だからです。

 

 

 

 

 

 

■クロノメーター・レゾナンスから、“共振時計”を知る!

 

では、ジュルヌ作品のクロノメーター・レゾナンスから、“共振時計”について詳しくなりましょう。

 

まず、ホイヘンスが振り子が共振することを発見したのですが、実際の携帯時計(懐中時計や腕時計)には振り子時計の“振り子”は入っていません。その代わりに入っているのが、振り子と同じ役目をする“テンプ”です。また、テンプは、基本的に「時計1個につき、1つしかない装置」という点も、頭に置いておいて下さい。

 

そして大切な点は、「共振するためには、時計が2つ以上必要」という点です。そのため、クロノメーター・レゾナンスは、「2つの時計を、1つのケース内に並べた時計」になっています。

↑2つの時計を、1つのケースに並べた

 

上の画像を見ても、左右に時計が2つ並んでいることが分かります。そして、裏からムーブメントを見ても、左右2つの駆動輪列があり、それに伴ってテンプも2つあります。

↑駆動輪列とテンプが並んで2つある

 

そして、2つの時計を並べもつクロノメーター・レゾナンスにおいて、振り子の役目をするテンプは、お互いにギリギリまで近くに設置されています。

 

このように、テンプをギリギリまで近くに設置させて、共振で2つのテンプの動きが同期するようにしているのです。どうやら、その“近さ”にもノウハウがあるようで、テンプの距離は調整できるような構造になっています。

↑テンプの距離は調整できる

 

そして、ここからが共振時計の本質の話になります。

 

まず、テンプは、機械式時計において“ペースメーカー”の役割をしており、精度を司る部品です。つまり、「テンプの動きのペース=時計の運針のペース」ということです(テンプのペースを基準に歯車の比率を決め、各針を動かしています)。

 

そのため、この2つのテンプを同期させると、

 

もし片方のテンプのペースがずれても、次第に2つのテンプは同じペースになっていく

 

という効果が得られます。

 

つまり、「一つの時計の時間がずれても、2つの時計の時間は次第に合うようになる」ということです。これで、時計の精度が安定するのです。このメリットを狙ったのが、共振時計なのです。まさにレゾナンスは、2つの時計をひとつにした、“一心同体ウォッチ”なのです。

↑クロノメーター・レゾナンスは

2つの時計の“一心同体ウォッチ”

 

 

 

 

 

■最後に

 

今回は、F.P.ジュルヌのクロノメーター・レゾナンスを通して、「レゾナンス」、つまり、共振時計について説明をしました。

 

ここで語ったように、レゾナンスは「精度の安定」を狙い、2つの時計を一心同体にする斬新な試みがなされた時計なのです。そして、その試みは、200年以上も前から始まった試みなのです。そこに、壮大なロマンを感じます。

↑レゾナンスは200年以上も前から始まった試み

 

そして、2000年に発売されたジュルヌ氏のレゾナンスは、2020年に20周年を迎えました。その年に、新たなクロノメーター・レゾナンスが発表され、話題になりました。新たなモデルは、ムーブメントが刷新されました(Cal.1499系→Cal.1520)。これまでのCal.1499系は、2つの動力(2つのゼンマイ)で2つの時計を動かしていました。しかし、新たなCal.1520は、1つの動力(1つのゼンマイ)で、2つの時計を動かす仕様になりました。

 

また、ここから、レゾナンスの新時代が始まろうとしています!

 

 

 

※おすすめ動画

 

※おすすめ記事

時計選びのときに知っておきたい!「独立時計師」という時計用語

Source: komehyo