【ロレックスのなぜ】なぜサブマリーナとデイトナはベゼルがセラミックになったのか? ~セラミックの実力をチェック~
ブログ担当者:須川
■【ロレックスのなぜ】なぜサブマリーナとデイトナはベゼルがセラミックになったのか? ~セラミックの実力をチェック~
ロレックスのモデルについて、よく受ける質問に
「ロレックスの“今のモデル”と“以前のモデル”は、何が違うのですか?」
という質問があります。
その質問への答えのために、私は、細かなモデルの新旧の違いを説明します。その中で、特にサブマリーナとデイトナについては、「現在のモデルは、ベゼル部分がセラミック製になりました」という違いを説明します。
すると、その答えを聞いた方から、
「なぜ、ベゼルをセラミック製に?何か良いことがあるの?」
という追加の質問がくることがあります。
今回は、この「なぜ今のモデルは、ベゼルをセラミック製にする流れがあるのか」という点を説明します。
■ベゼルをセラミック製にする理由
冒頭でも書きましたが、ロレックスのサブマリーナとデイトナでは、旧モデルから現在のモデルに変わる際に、ベゼルを「セラミック」にしました。実は、セラミックになる前のベゼルは、サブマリーナはアルミニウム製(プレート部)、デイトナはメタル製(例えばステンレス製など)でした。セラミック製ベゼルの導入時期で言うと、ステンレスモデルなら、サブマリーナは2010年から、デイトナは2016年からです。
では、なぜロレックスはサブマリーナやデイトナのベゼルをセラミック製にしたのでしょうか?
この答えはシンプルで、
「セラミックが傷に強い素材だから」
です。
もちろん、セラミック採用の理由は別にもあり、高級感を追求するための「デザイン面の変更」という要素もあるでしょう。しかし、やはり、セラミックにした一番のポイントは「傷に強い」という要素に違いありません。
ここで、より分かりやすいように実例を出します。次の画像は、実際に長年使用されたサブマリーナ(16613)のベゼル画像です。
このサブマリーナはいわゆる“旧型”で、前述の通り、アルミニウム製のベゼルプレートを採用しています。このサブマリーナからは、細かな傷から、剥がれ傷まで、かなり目立つ傷を確認できると思います。実は今回は、約30年前に製造された“特に使用感の強い個体”を選びました。そのため、敢えて傷が強い例を挙げました。
この例で分かるように、ベゼルは時計の前面に飛び出している部品なので、“傷がつきやすい部位”なのです。そして、その“傷がつきやすい部位”に旧型のサブマリーナはアルミニウム製のプレートを採用するため、使用傷がある程度付いてしまいます。
次に、“現行”のサブマリーナを見てみましょう。次の画像は、4年間ほど使用された現行サブマリーナ(116613LB)のベゼル画像です。
現行のサブマリーナは、前述の通り、セラミック製のベゼルを採用します。画像で言うと、青色の部分がセラミック製です。これも、敢えて割りと使用感のある個体を選びましたが、周りの金属部分には傷が多いにも関わらず、セラミック部には傷がないのが分かります。
これが、セラミックの実力です。
実は、セラミックはかなり硬度が高い素材で、硬さを示すビッカース硬さ(※1)でいうと1000~1200HVほどの硬度があります。アルミニウムやステンレスのビッカース硬さは200HV以下ですので、セラミックの方が大きく傷に強いと言われています。
ただし、傷に強いセラミックも、強い衝撃で欠けや割れを起こすことがありますので、完全無欠というわけではありません。私の感覚としても、セラミックは、「落とす・ぶつけるという“強い衝撃”には耐えられないが、擦れ傷などの“普段の使用で起こる傷”には強い」というイメージがあります。
おそらく、皆さんが“腕時計に与えるダメージ”のほとんどは、前者の“強い衝撃”ではなく、後者の擦れ傷などでしょう。そして、腕時計の中で、“傷がつきやすい部位”のひとつはベゼルです。そのため、ベゼルをセラミック製にすることは、有効なのです。
まとめると、腕時計のフェイス周りの目立つ部分である「ベゼル」に、「傷に強い」という要素を取り入れることを目的として、セラミック製ベゼルは導入されたのです。
■最後に
今回は、
「なぜ、ベゼルをセラミック製に?何か良いことがあるの?」
という質問への回答として、セラミックの「傷に強い」点を紹介しました。
実は、光沢のあるメタル製ベゼルをもつ旧デイトナは、ベゼルに擦れ傷が増えると、「ベゼルの光沢が少なくなる」という状況になっていました。その状況も、傷に強いセラミックベゼルを採用する現行デイトナは解決しています。
また、今回は説明を省きましたが、セラミックは「紫外線による変色に強い」という、別の良い点もあります。そのため、セラミック製ベゼルを採用したサブマリーナは、従来のアルミニウム製ベゼルで起こった色の退色が起こりません。
そのため、セラミック製ベゼルをもつサブマリーナやデイトナのベゼルは、「長きに渡ってずっと綺麗な状態を保つ」ことが期待できます。つまり、ずっと高級時計に“高級感”を残せるのです。
こう考えると、ロレックスが現行モデルに「セラミック製ベゼル」を採用するようになったことは、当然かもしれません。その採用が、私たちユーザーに大きなメリットを与えてくれるのですから!
※1・・・ビッカース硬さ:硬さ表す尺度。ダイヤモンドでできた試験具を被試験物に対して押込み、その凹み具合で硬いか柔らかいかを判断する。表記記号は「HV」。
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Source: komehyo
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